綾崎隼さんの最新作『死にたがりの君に贈る物語』を読了しました!
書籍情報
『死にたがりの君に贈る物語』
2021年5月6日発行 379p
ISBN:978-4-591-17008-3
『死にたがりの君に贈る物語』あらすじ
人気シリーズ『Swallowtail Waltz』の完結目前、作者であるミマサカリオリの訃報がSNSで告げられたところから物語が始まります。
その死によって熱狂的なファンの一人である中里純恋(なかざとすみれ)がベランダから身を投げ・・・。
ミマサカリオリの担当編集者である杉本敬之(すぎもとのりゆき)は、文芸編集部部長である上田玄一(うえだげんいち)とともに純恋の病室を訪れました。
「続きが読めないなら生きていても意味がない」という純恋。
杉本と上田はミマサカリオリの死について「普通じゃない」と感じています。
「作者が死んだ物語の結末を読む方法が、一つだけ、あるかもしれません」
ミマサカリオリのファンサイト「緑ヵ淵中学校」を通じて集められた7人の男女。
『Swallowtail Waltz』になぞらえて、廃校で共同生活を送り、作品の世界を再現して物語の結末を探ろうとします。
そんな廃校で絶対に起こるはずのない事件が起きてしまい―――。
『死にたがりの君に贈る物語』感想
※ネタバレ含みますのでご注意を。
「あなたがいるから、私は小説を書こうと思います。」
これが物語の全てだと思う。
言ってしまえば、作家とファンの、ただそれだけのお話。
ただ、物語に救われた経験のある人には刺さるかもしれない。
ジャンルとしては青春ミステリですが、綾崎作品にしてはそこまでミステリ感はないかな、と感じました。
雰囲気は『君を描けば嘘になる』とかそのあたりに近いかも?
廃校に集められた7人の男女もそれぞれキャラとして覚えやすいです。
塚田圭志(つかだけいし)26歳。主催者。杉本敬之のいとこ。
稲垣琢磨(いながきたくま)24歳。大学院生。元ボーイスカウト。
広瀬優也(ひろせゆうや)21歳。大学2年生。主人公。
清野恭平(せいのきょうへい)18歳。高校3年生。児童養護施設を家出中。
山際恵美(やまぎわえみ)26歳。家事手伝い。
佐藤友子(さとうともこ)23歳。フリーター。
中里純恋(なかざとすみれ)16歳。高校中退。
途中で『Swallowtail Waltz』のキャラも出てくるので、ちょっと混乱しかけました。
ジナ、ヒナト、カラス、ネズミ、ダイア、カブト、クレア、ノノ、ユダ、ルナ、マリア・・・。
正直、もう少し『Swallowtail Waltz』の内容も明らかにしてほしかったなぁとは思います。
ジナがなぜ死んだのか、その理由が明かされることなく終わってしまったので。
綾崎さん、いつか書いてくれないかな←
「皆、多かれ少なかれ嘘をついていますよね」
清野のその言葉で、みんなのついている嘘を考えていくのは楽しかったです。
「ミマサカリオリは男である」
そう言って盛り上がった翌日、最終巻の原稿が廊下に落ちていたという・・・。
男なのか、じゃあ広瀬なのかなぁと思ってしまった。まんまとw
共同生活が長くなるにつれ、だんだんと出始める離脱者。
まずは稲垣、それから山際。清野はさよならも言わずに出ていき、塚田も離脱。
そして広瀬も離脱し、廃校に残ったのは佐藤と中里の2人。
ミマサカリオリは佐藤だった、というのは最初から読んでいたらまぁそうだよねと納得。
一人だけ行動が読めなかったから何してるか分からなかったし。
物語を愛しているから救えた、救われた、2人。+αという感じ。
最後のミマサカリオリのあとがきも良かった。
「あなたがいるから、私は小説を書こうと思います。」